役所広司

役所広司:島田新左衛門(御目付七百五十石)

アクション映画の最高傑作

人物


公務員から俳優へ

長崎県諫早市で生まれる。大村市の長崎県立大村工業高等学校卒業後、上京して千代田区役所土木工事課に勤務。友人に連れられて観劇した仲代達矢主演の舞台公演『どん底』に感銘を受け俳優への道を志す。200倍もの難関である仲代が主宰する俳優養成所「無名塾」の試験に合格。芸名は前職が役所勤めだったことに加え、「役どころが広くなる」ことを祈念して仲代が命名。入塾初日に益岡徹と出会い、仲良くなる。


デビュー後の活躍

当初は所属する無名塾の舞台公演に出演。1980年(昭和55年)のNHK連続テレビ小説『なっちゃんの写真館』でテレビデビューを果たす。主に時代劇で評価を得ていた。1983年(昭和58年)のNHK大河ドラマ『徳川家康』の織田信長役で注目を集め、1984年(昭和59年)のNHK新大型時代劇『宮本武蔵』の主人公・武蔵役で初めて主演に抜擢される。民放の時代劇作品では、『三匹が斬る!』シリーズなどが代表作。

映画では、伊丹十三監督作品の『タンポポ』などに出演。1988年(昭和63年)の日本・スイス合作映画『アナザー・ウェイ ―D機関情報―』(西村京太郎の小説『D機関情報』の映画化作品。山下耕作監督作品)の主人公・関谷海軍中佐役で映画初主演を果たす。『オーロラの下で』で初めて日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を獲得する。1995年(平成7年)、『KAMIKAZE TAXI』(原田眞人監督)で毎日映画コンクール主演男優賞を受賞。後にインタビューで「この賞が一番嬉しかった」と語る。

この頃、役所が主演するドラマや映画は評価は高いもののヒットには恵まれず、制作発表の記者会見では「低視聴率男です」と自らネタにして笑いをとっていた。


作品の大ヒットから地位確立まで

1996年(平成8年)公開の『Shall we ダンス 』が大ヒットとなる。さらに、『シャブ極道』(細野辰興監督作品)、『眠る男』(小栗康平監督作品)の演技が絶賛され、その年度の主演男優賞を総ざらいする。1997年(平成9年)の『失楽園』も大ヒットする。今村昌平監督の映画『うなぎ』が1997年(平成9年)にカンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞すると、この2年で20以上の映画賞を獲得。(今村とは、今村の遺作『赤い橋の下のぬるい水』でも共演)以後、黒沢清や青山真治らが監督を務める映画へ出演。東京国際映画祭での主演男優賞受賞、1996年(平成8年)から7年連続で日本アカデミー賞の優秀主演男優賞を受賞するなど、毎年の映画祭でその名前を挙げられないことはないほど名実共に、日本を代表する映画俳優の一人となった。


世界進出

2005年(平成17年)にはアジアを代表する俳優、ハリウッドを牽引するスタッフが集結したことで話題を呼んだ『SAYURI』に参加。また、2006年(平成18年)のカンヌ国際映画祭にで監督賞を受賞した『バベル』では、ブラッド・ピットと共演。2007年(平成19年)には日米伊合作映画『シルク』に中谷美紀、キーラ・ナイトレイとも共演。シカゴ国際映画祭主演男優賞、バレンシエンヌ国際映画祭オマージュ賞、アジア太平洋映画祭主演男優賞、ゴッサム賞アンサンブル演技賞、東京国際映画祭主演男優賞、パームスプリング国際映画祭アンサンブル演技賞、サンディエゴ映画批評家協会アンサンブル演技賞、アメリカ俳優組合賞ノミネートなど海外でもその高い演技力に対し賞が贈られている。インタビューなどで「いい作品があれば、海外のものにも出たいが日本映画で認められたい。」と語っている。


その他

  • 無名塾の入塾試験では、大声でセリフをしゃべれと言われ、あまりの大声を出したため失神寸前で倒れてしまった。
  • 映画での活躍が目立つにつれテレビドラマの出演は稀になったが、日本テレビ系列で放送中の『東京日和』で進行役を担当。テレビ東京系列で放送中の『日経スペシャル ガイアの夜明け』では2009年(平成21年)まで初代進行役を務めた。
  • 1980年代前半に発表されていた一部資料の生年月日と差異があるがミスプリントであると思われる(ノート参照)。
  • イメージキャラクターを10年以上務めた名古屋の紳士服量販店(トリイ)がメンズプラザアオキに買収された際に、そのままイメージキャラクターを続けることになりアオキのCMに出演している。
  • フィンランド航空の日本向け広告等に、イメージキャラクター『Mr.ヨーロッパ』として、2010年(平成22年)から起用されている。

出演作品


映画

  • 遠野物語(岩手放送=俳優座・東宝・村野鉄太郎監督、1979年)
  • 闇の狩人(1979年6月、松竹=俳優座)
  • 鬼龍院花子の生涯(1982年6月)近藤役
  • ひめゆりの塔(1982年6月12日・東宝)大高見習士官役
  • タンポポ(1985年11月23日・東宝)白服の男役
    • 全米大ヒット
  • アナザー・ウェイ ―D機関情報―(1988年9月17日・東宝東和)関谷直人役
    • 日本・スイス合作
  • オーロラの下で(1990年8月3日・東映)後藤俊夫役
    • 日本・ソ連合作
  • 紅蓮華(1993年)
  • 極東黒社会(1993年・東映)
  • しのいだれ(1994年3月10日・大映)吉川一平役
  • KAMIKAZE TAXI(1995年4月29日・ビターズエンド)寒竹一将役
    • バレンシエンヌ映画祭審査員特別賞・監督賞受賞
  • Shall we ダンス?(1996年1月27日・東宝)杉山正平役
    • 全米大ヒット、ナショナル・ボード・オブ・レビュー外国語映画賞、シカゴ映画批評家賞外国語映画賞、放送映画批評家賞外国語映画賞など受賞
  • シャブ極道(1996年5月27日・大映)真壁五味役
  • 失楽園(1997年5月10日・東映)久木祥一郎役
    • モントリオール映画祭コンペティション
  • うなぎ(1997年5月24日・松竹)山下拓郎役
    • カンヌ映画祭パルムドール受賞
  • バウンス Ko GALS(1997年10月18日・松竹)
    • ロッテルダム映画祭招待作品
  • CURE(1997年12月27日・松竹富士)高部賢一役
    • 東京国際映画祭主演男優賞受賞、トロント映画祭招待作品
  • 絆 -きずな-(1998年・東宝)
  • たどんとちくわ(1998年12月5日・ギャガ・コミュニケーションズ)木田役
  • ニンゲン合格(1999年1月23日・松竹)藤森岩雄役
    • ベルリン映画祭招待作品・第11回東京国際映画祭アジア映画賞スペシャル・メンション(審査員特別賞)
  • 金融腐食列島 呪縛(1999年9月18日・東映)北野浩役
    • ベルリン映画祭招待作品
  • カリスマ CHARISMA(1999年・日活)藪池五郎役
    • カンヌ映画祭招待作品、トロント映画祭招待作品
  • どら平太(2000年5月13日・東宝)望月小平太役
    • ベルリン映画祭招待作品、サンフランシスコ映画祭招待作品
  • EUREKA(2001年1月20日・東京テアトル)沢井真役
    • カンヌ映画祭国際批評家連盟賞・エキュメニカル賞、シンガポール映画祭グランプリ受賞、ベルギー王立アーカイブ・グランプリ受賞
  • 回路(2001年2月3日・東宝)船長役
    • カンヌ映画祭国際批評家連盟賞受賞
  • 降霊(2001年5月12日・スローラーナー)佐藤克彦役
    • ロカルノ映画祭招待作品、トロント映画祭招待作品
  • 赤い橋の下のぬるい水(2001年11月3日・日活)笹野陽介役
    • カンヌ映画祭コンペティション、シカゴ映画祭主演男優賞受賞、モントリオール映画祭招待作品
  • 突入せよ! あさま山荘事件(2002年5月11日・東映)佐々淳行 役
    • パームスプリング国際映画祭招待作品
  • 11’09”01/セプテンバー11日本編(2002年)
    • 脚本:天願大介
  • ドッペルゲンガー(2003年9月27日・アミューズピクチャーズ)早崎道夫とそのドッペルゲンガー役
    • トロント映画祭招待作品、シアトル映画祭招待作品、釜山映画祭オープニング作品
  • 油断大敵(2004年1月17日・グルーヴコーポレーション)関川仁役
  • 東京原発(2004年3月13日・ザナドゥー)天馬都知事役
    • シアトル映画祭招待作品、トロント映画祭招待作品
  • ほたるの星(2004年6月5日・角川映画)瀧口先生役
  • 笑の大学(2004年10月30日・東宝)向坂睦夫役
    • 釜山映画祭招待作品
  • レイクサイド マーダーケース湖邊兇殺案(2005年1月22日・東宝)並木俊介役
  • ローレライ(2005年3月5日・東宝)絹見真一役
  • SAYURI(2005年12月10日・コロムビア映画)
    • アメリカ映画 米アカデミー賞撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞受賞、ゴールデングローブ賞作曲賞受賞
  • THE 有頂天ホテル(2006年1月14日・東宝)新堂平吉役
    • コニャック映画祭招待作品
  • それでもボクはやってない(2007年1月20日公開)荒川正義役
  • 叫(2007年2月24日公開)吉岡登役
    • ヴェネツィア国際映画祭招待作品
  • アルゼンチンババア阿根廷婆婆(2007年3月24日公開)涌井悟役
  • バベルBabel(2007年4月28日公開)
    • アメリカ映画 米アカデミー賞作品賞ほかノミネート、カンヌ映画祭監督賞、ゴールデングローブ賞作品賞受賞
  • 象の背中(2007年秋公開)藤山幸弘役
  • シルク(2008年1月19日公開)原役
    • 日本・カナダ・イタリア合作
  • パコと魔法の絵本(2008年9月13日公開)大貫役
  • トウキョウソナタTokyo Sonata(2008年公開・カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞受賞)泥棒役
  • ゼラチンシルバーLOVE(2009年3月公開)
  • 劒岳 点の記(2009年6月20日公開)古田盛作役
    • 長男・橋本一郎も出演
  • ガマの油(2009年6月公開・初監督・主演作品)
  • 十三人の刺客(2010年9月公開)島田新左衛門役
  • 最後の忠臣蔵(2010年公開)
  • 一命(2011年公開)
  • 聯合艦隊司令長官 山本五十六(2011年12月公開・主演)山本五十六 役
  • わが母の記(2012年公開・モントリオール世界映画祭審査員特別グランプリ受賞)伊上洪作役
  • キツツキと雨(2012年公開・ドバイ国際映画祭最優秀男優賞受賞)